内に弱い選手がいると、1号艇の1着率は27ポイント落ちる
並びで何が変わるか
283,451レースを、「内側2艇の平均勝率 − 外側3艇の平均勝率」で並べ替え、 上位10%と下位10%を比べました。
| 並び | 件数 | 1号艇の1着率 | まくり系の決着 |
|---|---|---|---|
| 内が弱い(下位10%) | 28,361 | 38.5% | 40.6% |
| 内が強い(上位10%) | 28,375 | 65.4% | 18.4% |
内が弱いと、1号艇は逃げ切れず、外から攻める決着が2倍以上に増えます。 理屈としては当たり前に聞こえますが、差の大きさが予想以上でした。 実力のばらつき(内外の差ではなく、6人の散らばり)だけで分けても、 60.6%から51.5%まで9ポイント動きます。
強い選手ばかりだと、どうなるか
「上手い人ばかりが集まったレースはどうなるのか」を確かめるため、 グレード別に見ました。
| グレード | 平均勝率 | ばらつき | 1号艇の1着率 | まくり系 |
|---|---|---|---|---|
| SG | 7.18 | 0.45 | 63.5% | 22.4% |
| G1 | 6.78 | 0.52 | 62.9% | 22.3% |
| 一般 | 5.11 | 1.14 | 55.0% | 27.4% |
SGのほうがインが堅いという結果です。一見すると意外ですが、 「ばらつき」の列を見ると理由が分かります。SGは実力が揃っている(0.45)ため、 外から仕掛ける材料がありません。一般戦は実力差が大きく(1.14)、 弱い艇を狙い撃つ形が作れます。
つまり効いているのは実力の絶対値ではなく、隣との差です。
「すぐ内の1艇」か、「内の平均」か
5号艇にとって障害になるのは、すぐ内の4号艇でしょうか。 それとも内側4艇の全体でしょうか。自分の実力を揃えて比べました。
| 見方 | 3号艇での効き | 5号艇での効き |
|---|---|---|
| すぐ内の1艇との差 | +3.9pt | +1.7pt |
| 内の全艇の平均との差 | +8.2pt | +3.4pt |
平均のほうが約2倍効きました。物理的にも筋が通っています。 5号艇が前に出るには、4号艇が凹むだけでは足りず、 1号艇や2号艇の側も手薄でなければ抜けるコースが生まれません。
ただし、最も効いたのは平均でもなかった
実際にモデルへ入れて重要度を測ると、勝ったのは 「内でいちばん強い1艇との差」でした。全99項目のうち3位です (1位は自分のコース別勝率、2位はスタートの噛み合わせ)。 全国勝率や展示タイムより上に来ています。
5号艇にとっての障害は、すぐ内の艇でも、内の平均でもなく、 越えられない1艇だった、ということです。 そこさえ強ければ、他が弱くても隊列は崩れにくい。
絶対値ではなく差で持つ
勝率5.8と6.0の選手が並んでいても、実質的な差はありません。 3.0と6.0なら決定的です。同じ「6.0」でも、隣が誰かで意味が変わります。
そこで内の艇との勝率差を段階で見ると、きれいに変化しました。
| すぐ内との勝率差 | 6号艇の1着率 | 6号艇の3着以内率 |
|---|---|---|
| 小さい(内のほうが強い) | 1.7% | 21.8% |
| 大きい(自分のほうが強い) | 20.7% | 63.7% |
1着率で12倍、3着以内率で3倍近く違います。5号艇でも3.3%から18.7%まで動きます。 大外だから来ない、のではありません。内が弱ければ来ます。
なぜモデルに足す必要があったか
このモデルは、選手ごとに「進入コース別の直近勝率が、そのレースの平均からどれだけ離れているか」 という値を最も重視しています(重要度1位)。 ところがこの値は6艇を対等に扱います。
5号艇にとって、1〜4号艇は「抜かなければならない相手」で、 6号艇は「関係がない」——この区別ができていませんでした。 学習の仕組みは1艇ずつを独立に見るため、 並びという情報は、あらかじめ作って渡さないと存在し得ません。
作って入れた結果、モデルの精度はこう変わりました。
| 導入前 | 導入後 | |
|---|---|---|
| 1着予測の誤差(対数損失・小さいほど良い) | 0.31894 | 0.31794 |
| 本命の1着的中率 | 56.98% | 57.06% |
数字としては小さく見えますが、この規模のモデルでは 単一の追加としては大きいほうです。何より、 「なぜそう予想したか」を説明できる項目が増えたことに意味があります。
この検証について
使ったのは公開データだけです。並びは展示航走で分かる進入コースを使っており、 レース後にしか分からない実際の進入は使っていません。
なお、この情報で儲かるとは書きません。 市場もレースを見て並びを判断しているので、 オッズに織り込まれている部分が大きいはずです。 ここで書いたのは、モデルが競技の構造をどう捉えているか、 そして予想の根拠として何を見ているかです。